「おせちの栗きんとんを入れる意味は?」「おせちに栗きんとんを入れるようになった由来は何?」
老若男女から愛されるおせち料理の栗きんとん。このように意味や由来が気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では栗きんとんをおせち料理に入れる意味や由来、レシピなどを紹介します。栗きんとんを入れる意味を知れば、おせちをよりおいしく楽しめるでしょう。
おせち料理の栗きんとんの意味・由来
おせち料理の栗きんとんに込められた意味は次の2つです。
- 勝負運を招く
- 金運を招く
お正月を祝うおせち料理に栗きんとんが入るのは、栗が勝負運を招く縁起のよい食べ物とされていたことや、栗きんとんの鮮やかな黄金色が金運を上げると考えられたことによります。
勝負運を招く
勝栗という言葉があるように、栗は昔から勝ち運に恵まれる食べ物とされてきました。
栗が「勝つ」に結びついたのは、栗の実をくだいた「搗ち栗」にあります。搗つ(かつ)は食物を臼で突いて砕くことですが、音が勝つに通じるので「搗ち栗」が「勝ち栗」として縁起物になったのです。
とくに戦の出陣には勝栗は欠かせないものでした。甲斐の武田信玄は、出陣のときにあわび、勝ち栗、昆布を肴に戦勝を祈る儀式を行ったという記録が残されています。
この栗の勝負運を踏まえて、おせちの栗きんとんも勝負運を招く意味をもつといわれています。
金運を招く
栗きんとんは、そのあざやかな黄金色から、金運を上げる縁起のよい食べ物とされ、おせちの定番メニューになりました。
栗きんとんは漢字では「栗金団」と書きます。「団」はなにかの固まりや集まりを意味するので、金団は金の固まりとも読めます。「栗金団」が金運に結びついたのはもっともです。
栗きんとん以外のおせちの定番の種類ごとの意味は、以下の記事で紹介しています。
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栗きんとんはおせちの「口取り」の一つ
おせち料理には「祝い肴」「口取り」「酢のもの」「焼きもの」「煮もの」のジャンルがあり、栗きんとんは「口取り」の一つです。
元々おせちは年神様をもてなす料理で、もてなし料理で最初に出される品を「口取り」といいます。
おせちの口取りには栗きんとんの他に、紅白のかまぼこ、伊達巻、昆布巻き、ハゼの甘露煮などが用いられます。
最初に出される料理なので、栗きんとんなどの口取りは重箱のいちばん上になる一の重に詰められるのがしきたりです。
おせちの栗きんとんのレシピ・作り方
栗きんとんには、栗を裏ごしにして作るタイプと、サツマイモを裏ごしして栗の甘露煮を加えるタイプがあります。
和菓子は栗を裏ごしにするものが多いですが、おせちに入れる栗きんとんはサツマイモを裏ごしにするタイプです。
ここでは、サツマイモを使うタイプの栗きんとんの作り方を紹介します。
【栗きんとんの材料】
- サツマイモ
- 栗の甘露煮(瓶詰めなど)
- 砂糖
- みりん
- 塩
- くちなしの実
サツマイモの下ゆでと裏ごし
サツマイモの下ゆでは次の手順で行います。
- サツマイモを3~4cm幅の輪切りにする
- スジっぽさをなくするために皮を厚めにむく
- 水にさらしてアクを抜く
- 鍋に水とくちなしの実、サツマイモを入れて火にかける
- サツマイモに竹串かすっと通るまでやわらかく煮る
くちなしの実を加えるのは、サツマイモの黄色の発色をよくするためです。
次に、ゆで上がったサツマイモをザルまたは裏ごし器で裏ごしします。ザルに残った繊維はかならず取り除きましょう。繊維を除くことで滑らかな口当たりになります。
栗を加えて仕上げ
裏ごししたサツマイモに、栗の甘露煮のシロップと水を少し加えて混ぜ、固まりをゆるくします。
ゆるくしたサツマイモを火にかけて練り、適当な固さまで水分を飛ばしましょう。
最後に、栗の甘露煮を加えて出来上がりです。栗はまるごと入れても、2つか3つに割って入れてもOKです。
栗きんとんの歴史
栗きんとんは岐阜県東濃地方が発祥の地とされ、JR中津川駅前には「栗きんとん発祥の地」の石碑があります。
中津川には元禄年間に創業された老舗もありますが、この地方で有名なのは和菓子の栗きんとんで、サツマイモを裏ごしして栗の甘露煮を加えたおせちの栗きんとんではありません。
現在のような、サツマイモの餡を使う栗きんとんができたのはいつ頃なのかは、たしかな記録は残されていません。
栗料理の歴史とおせちとの結びつき
さるかに合戦など栗が登場する民話は各地にあり、栗は昔から日本人には親しみのある食材でした。
民話の一つに、舌切り雀と継子いじめをミックスしたような栗拾いの話があります。
栗は縄文時代から大切な食糧だった
各地の縄文遺跡から炭化した栗が発掘されているので、栗は縄文時代から日本人に取って大切な食糧だったことがわかります。
また、遺跡の周囲に栗林の跡があり、住居の周囲で栗を栽培していた可能性があります。
栗は将軍家へ献上される「江戸三大果」の一つ
江戸時代、各藩から将軍家へ献上されるものの中で「江戸三大果」と呼ばれたのが、紀州みかん、甲州ぶどうと小布施〈おぶせ)の栗でした。
信州(長野県)の小布施(おぶせ)は、岐阜県中津川市と並ぶ栗菓子の名所です。栗菓子の専門店が多数あり、町役場も栗菓子を中心にした観光政策に力を入れています。
おせちの栗きんとんに使われる栗の産地と品種
栗の三大産地は茨城県(24%)、熊本県(14%)と愛媛県(8%)で、岐阜県と埼玉県がそれに次ぎます。日本の栗生産量の5割強をこの5県で占めています。
栗の品種は多く、政府の統計データに記載されているものだけでも40種以上あります。
このうち、栽培面積で上位5位に入るのが下記の5品種です。
栽培面積 | 栗の品種 | 国内生産量に占める割合 |
---|---|---|
1位 | 筑波 | 17.70% |
2位 | 銀寄 | 9.05% |
3位 | 丹沢 | 8.97% |
4位 | 利平ぐり | 4.44% |
5位 | 石鎚 | 3.60% |
参照:食品データ館「【品種別】栗(くり)の栽培面積ランキング/シェア」
ブランド栗「丹波栗」とは
品種とは別に、産地の名を冠したブランド栗があります。よく知られているのは兵庫県の「丹波栗」と長野県の「小布施栗」です。
大粒で美味として有名な丹波栗は、意外にも品種はさまざまで、早生種として丹沢、国見、大峰、中生種として筑波、有磨、銀寄、晩生種として石槌、岸根、正月が栽培されています。
大粒で美味しく育てる秘密は、品種ではなく剪定にあるといいます。
栗の栄養価
栗はナッツ類としては脂質が少なく、でんぷん質が多いのが特徴です。
栄養素として、たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB1、B2、C、カリウム、葉酸、食物繊維、ミネラルを含みます。
渋皮煮に利用される渋皮には、ポリフェノールの一種のタンニンも含まれています。
参照:文部科学省「食品成分データベース 日本ぐり/生」
おせちの栗きんとんに関するよくある質問
おせちの栗きんとんに関する、よくある質問を3つ取り上げて解説します。
- おせちの栗きんとんと栗の和菓子の違いは?
- おせちの栗きんとんの作り方は関東と関西で違う?
- おせちの栗きんとんの意味は英語でどう伝える?
おせちの栗きんとんと栗の和菓子の違いは?
おせちの栗きんとんと和菓子の栗きんとんは、材料も作り方も違います。
おせち料理の栗きんとんは、サツマイモを裏ごしして作った餡に、栗の甘露煮を混ぜ込んだものです。
和菓子の栗きんとんは、栗を裏ごしして茶巾絞りにするなどで形を整えたもので、サツマイモは使われていません。
和菓子の栗きんとんは、菓子舗によってさまざまな形があります。
おせちの栗きんとんの作り方は関東と関西で違う?
おせちの栗きんとんに関東、関西の違いはなく、どちらもサツマイモの餡に栗の甘露煮を加えたものです。
SNSなどで「関東の栗きんとん=サツマイモの餡を使う栗きんとん」「関西の栗きんとん=栗だけを使う和菓子の栗きんとん」とする意見があるのは、誤解だと考えられます。
そもそも、和菓子の栗きんとんで有名なのは、岐阜県の中津川と長野県小布施で、どちらも関西圏というよりは関東圏です。
おせちの栗きんとんの意味は英語でどう伝える?
外国人の旅行者などに、おせちの栗きんとんの意味について聞かれたときは、下記を参考にして回答してみましょう。
栗:chestnut
栗きんとん:mashed sweet potatoes with sweetened chestnuts
栗を食べると勝負に勝つといわれている:It is said that eating chestnuts "wins the game".
また、栗きんとんは金色なので、食べるとお金が儲かるといわれている:Also, chestnut kinton is golden, so eating chestnut kinton is said to "bring you more money".
おせちの栗きんとんの意味を知っておいしく食べよう
おせちの栗きんとんには勝負運や金運アップの意味があります。
お正月にはおいしい栗きんとんを食べて、今年一年の運気向上を祈りましょう。
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