「おせち料理に黒豆を入れるのはどんな意味があるの?」
「おせちに黒豆を入れるようになった由来は?」
このように、おせちと黒豆の関係が気になっている方もいるのではないでしょうか。
ふっくらと艶やかに煮あがった黒豆はいかにもお正月らしいめでたさを感じさせます。
この記事では、おせちに黒豆が使われる意味や由来を解説します。黒豆の有名な産地や栄養価、おいしい煮方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
おせちの黒豆に込められた意味

おせち料理に黒豆を入れるのは、豆と「まめに」を掛けて、「まめに暮らす」「まめに働く」願いや誓いを込めてお正月を祝う意味があります。
他にも、黒豆にはさまざまな意味が込められているので詳しく見ていきましょう。
勤勉・健康
おせち料理の黒豆には、勤勉と健康の意味があります。「まめ」という言葉には「元気で誠実に物事へ取り組む」という意味合いがあり、転じて黒豆に勤勉や健康の願いが込められました。
黒豆を家族で分け合い、共に食べることで、家庭の健やかさと勤勉さを祈ることにもつながります。
日々の生活を健やかに送る意味でも、今では黒豆がおせち料理の定番になりました。
子孫繁栄・幸福
黒豆には、家族の幸福と子孫繁栄を願う意味もあります。
一粒ひとつぶに願いを込めながら食べることで、子や孫にまで幸福がつながっていくと信じられてきた食品です。また、黒色は邪気を払うとされ、健康を守る縁起につながることから、不老長寿や無病息災の願いとも結びつけられてきました。
黒豆は家庭全体の幸せを祈り、新しい年を笑顔で迎えるために食べられてきた大切な縁起物です。
不老長寿祈願
黒豆には不老長寿を願う祈りが込められています。煮上がった豆に寄るシワは「年を重ねても元気に生きられる証」とされてきたからです。
また、黒い色味は古くから生命力の象徴と考えられ、力強く暮らす姿に結びつけられています。
さらに、黒豆を一粒ずつ丁寧に食べることは、食べ物を粗末にせず感謝していただく姿勢を示すものです。食べ物に感謝することが生命を尊ぶ心につながり、長寿を願う祈りにも重ねられてきました。お正月に黒豆を食べることで、家族全員が健康になり、長寿に恵まれるといわれています。
魔除け・厄除け
おせち料理に入っている黒豆は、邪気を払う縁起物として食べられることが多い食材です。黒色は力強さと同時に魔を退ける色と考えられ、古くから人々の生活に取り入れられています。
黒豆を正月に食べることで、一年を災いなく過ごし、家族が健やかに暮らせるといわれています。
黒豆は邪気を払う意味で、時代を超えて大切にされてきた食べ物です。現代においても、単に健康だけでなく、魔除け・厄除けの意味でおせち料理に入れられることがよくあります。
おせちの黒豆はなぜ黒色?色の意味を解説

おせちの黒豆の黒色には「邪気払い」と「健康祈願」の意味があります。
邪気払い
中国から伝わった陰陽五行説では、物質の五大要素は「木・火・土・金・水」で、それを色で表すと「青・赤・黄・白・黒」になるとされています。
陰陽五行説を基礎にする風水では、水を表す黒は邪気を払う魔除けの色とされ、おせちに黒豆を使う習わしには。一年間の災厄を防ぐ願いが込められています。
健康祈願
昔の人は、元気で一生懸命働くようすを「真っ黒になって働く」といいました。
働くといえば畑仕事が真っ先にイメージされた昔は、太陽を浴びて土にまみれて働くのが健康と勤勉の象徴でした。
そんなところから、黒は健康のシンボルと考えられ、お正月に黒豆を食べることには健康祈願の意味があります。
おせちの黒豆は煮方にも意味がある

おせちの黒豆は煮方にも意味があり、関東と関西では違いがあります。
関東では、皮にしわが出るようにしっかりと煮て「しわが寄るまで元気に働けるように」という願いを込めます。
関西では、しわにならないようにふっくらとやわらかく煮て「いつまでも若々しく艶やかに」と願うのが習わしです。
しかし近年は、関東でもしわのない艶やかな煮あがりが好まれるようになっています。
おせち料理の黒豆の煮方に厳密なルールはないので、好みに合わせて選ぶとよいでしょう。
黒豆とおせちの結びつきの歴史と意味

おせちに黒豆を入れることが文献で確認できるのは、江戸時代の風俗・習慣を記した「嬉遊笑覧」(1830年 天保元年)からです。
出典:日本豆類協会「丹波黒大豆の現況と食の歴史2」
明治38年に刊行された「絵本江戸風俗絵図」には、正月三が日には、重詰に黒豆と田作り、数の子を詰めて食べたと記されています。
おせち料理としてではありませんが、日本の文献に黒豆が最初に登場するのは平安時代後期の「倭名類聚抄」で、黒豆は「烏豆」と表記されていました。
昔から黄大豆はみそ用の豆として使われていましたが、黒豆は食用と薬用(漢方)の両方があり、戦国時代には戦のときの非常食にも用いられたといいます。
やがて黒豆は「祝い肴三種」の一つとして定着しました。
関東では黒豆・数の子・田作り、関西では黒豆・数の子・たたきごぼうが基本とされ、現在でもおせちの最上段に欠かせない縁起物として親しまれています。
おせちの黒豆の主な産地

黒豆は兵庫県の丹波地方を中心にした西日本で多く栽培されています。
とくに丹波篠山の黒豆は昔から有名で、江戸時代には、丹波篠山藩三代藩主青山忠講(ただつぐ)が将軍徳川吉宗に黒豆を献上したという記録があります。
参照:JR西日本 Blue Signal「2012 vol.142 5月号」
また、亨保15年(1730)の料理本『料理網目調味抄』には「黒豆は丹州笹山の名物なり」「黒豆 丹州笹山よし」と記されています。
ブランド黒豆「丹波黒」が誕生したのは昭和16年
ブランド黒豆「丹波黒」が誕生したのは、それほど古い話ではなく昭和になってからです。
兵庫県農事試験場(現:兵庫県立農林水産技術総合センター)は、丹波篠山地域で古くから栽培されていた在来種「波部黒」の品種比較試験を行い、もっとも優良なものを昭和16年に「丹波黒」と命名しました。
参照:農林水産省「丹波篠山の黒大豆栽培~ムラが支える優良種子と家族農業~」
丹波篠山の「丹波黒」は世界一大きな大豆
丹波黒は、世界一の極大粒大豆として知られています。一般的な大豆は100粒で40gほどですが、丹波黒は80gを超えます。
また、丹波黒は表面にブルームと呼ばれる蝋成分を生じるのが特徴です。煮豆にしたときに皮が破れにくく、漆黒のツヤが美しいのはこのブルームのおかげです。
味に独特の芳香があり、煮豆やスイーツなどの甘い味付けに負けないたしかな旨みがあります。
参照:農林水産省「丹波篠山の黒大豆栽培~ムラが支える優良種子と家族農業~」
おせちの黒豆の栄養価

黒豆は良質なタンパク質とポリフェノールが豊富で、栄養価の高い食品です。
食物繊維、ミネラル、ビタミンB群も豊富で、黒い皮に含まれるポリフェノールは抗酸化作用が期待されます。
黒豆は昔から健康によい食品とされており、漢方薬や薬膳料理にも使われています。漢方では腎臓の働きをよくしてむくみを取るといわれています。
参照:黒大豆の機能性研究会「黒大豆の成分と健康機能」
おせちに入れる黒豆のおいしい作り方

おせちの黒豆のレシピはたくさんあり、それぞれに工夫されていますが、おいしく作るポイントは下記の5つです。
- 前日に煮汁を作って黒豆をつけておく
- 鍋に火をかける前に鉄玉子やさび釘を一緒に入れる
- 弱火で長時間煮る
- 黒豆を指で軽く押して柔らかさを確認する
- 煮汁に浸したまま冷ます
豆のコリッとした固さが残らないように煮ることと、黒い色があせないように煮るのが肝心です。
1.前日に煮汁を作って黒豆をつけておく
黒豆を水で戻すと、皮より中身が早く水を吸って膨張するので、皮に裂け目ができて煮ているうちに剥がれやすくなります。
皮が破れないようにするには、水ではなく、砂糖、醬油、塩など調味料をすべて入れた煮汁につけるのがコツです。それによって浸透圧が小さくなり、豆がゆっくりと膨らみます。
さらに、煮汁を煮立ててから豆を入れると、皮が伸びるスピードが速くなり、より皮が剥がれにくくなります。
煮汁が煮立ったら、火を止めて黒豆を入れ、フタをして一晩そのまま置いておきます。
重曹や焼きミョウバンを入れる場合も、黒豆をつける段階から入れておきましょう。
重曹は豆の繊維をやわらかくするため、焼きミョウバンは色よく煮るために入れます。
【煮汁の材料・調味料】
- 黒豆
- 水
- 醤油
- 塩
- (重曹)
- (焼きミョウバン)
2.鍋に火をかける前に鉄玉子やさび釘を一緒に入れる
黒豆を色よくつややかに仕上げるため、鍋に火をかける前に鉄玉子やさび釘を入れましょう。調理の最初に鉄を加えておくことで、煮上がった後の黒豆の色味が安定し、深みのある黒色を保てます。
色味がよくなるのは、鉄玉子やさび鉄の鉄分が、黒豆の皮に含まれる色素(アントシアニン)の分解を防ぐためです。
火をつける前に鉄分を入れておくことで煮はじめから効果が発揮され、見栄えのよい黒豆に仕上がります。手間のかかる作業ではありますが、黒豆の完成度を大きく左右する重要なポイントです。
なお、さび釘を使う場合は布袋に入れて清潔に調理するのが一般的です。黒豆を毎年用意する場合は、繰り返し利用できる鉄玉子を使うのもおすすめです。
3.弱火で長時間煮る
前日煮汁につけた黒豆を中火にかけて煮立てます。
煮汁が煮立ったら少し弱火にして、出てきたアクをすくい取ります。最初1時間ほどはアクが出てくるので、ときどき取り除きましょう。
アクが出なくなったらさらに弱火にして、5~6時間コトコト煮ます。黒豆をふっくら均一に煮るには、落とし蓋と鍋のふたを両方使うのが効果的です。豆が煮汁から浮かず、むらなく火が通ることで、形を崩さずきれいに仕上がります。黒豆が煮汁の表面から出そうになったら水を足して、ひたひたの状態で煮ていきましょう。
煮あがったら火を止めて、冷めるまで放置します。冷める間に煮汁の味が豆の中まで染み渡ります。
4.黒豆を指で軽く押して柔らかさを確認する
次に、黒豆を指で軽く押して柔らかさを確認します。
豆は表面が一見つややかでも、中心が固い場合があるため、実際に触って柔らかさを確かめておきましょう。スプーンや箸では弾力がわかりづらいため、粗熱をとってから指で直接押すのがおすすめです。
豆がスッとつぶれる程度であれば、ふっくらと煮えており食べごろの状態です。もし固ければもう少し煮込みましょう。逆に潰れすぎる場合は煮すぎのサインとなります。
程よい食感を残すことが、黒豆のおいしさを引き立てるポイントです。ちょうどよい柔らかさで煮れば、口に入れたときの心地よい歯ごたえと優しい甘みが調和し、正月料理らしい黒豆に仕上がります。
5.煮汁に浸したまま冷ます
黒豆は煮終わったらすぐに取り出さず、煮汁に浸したまま冷ましましょう。
冷ます過程で煮汁がゆっくりと豆に染み込み、内部まで甘みが均一に行き渡ります。じっくりと時間をかけることで、豆本来の旨みと調味料の甘みが調和し、より奥行きのある風味を楽しめるようになるでしょう。
反対に、急いで取り出すと仕上がりにムラが出てしまうため注意が必要です。
一晩置けば、さらにしっとりとして口当たりが良くなり、本格的な仕上がりになります。正月料理として振る舞う際にも、落ち着いた味わいが出ていると食卓全体の満足度が高まるでしょう。
完成した黒豆を保存する際は、煮汁ごと容器に入れておきましょう。煮汁に浸しておくことで、乾燥を防ぎながら風味を長持ちさせられます。
おせちの黒豆に関するよくある質問

おせちの黒豆に関するよくある質問について解説します。
Q.お正月の黒豆はいつまで食べられる?
おせちの黒豆は、保存方法によって次のように食べられる期間が変わります。
|
保存方法 |
保存可能期間 |
|---|---|
|
常温保存 |
2〜3日程度 |
|
冷蔵保存 |
4日〜5日程度 |
|
冷凍保存 |
1ヶ月程度 |
気温が高い地域や暖房の効いた部屋に置くと傷みやすくなるため、直射日光を避けてできるだけ冷暗所に保管することが大切です。
冷蔵の場合は清潔なガラス瓶やタッパーに煮汁ごと移して、雑菌が入らないよう密閉して保存しましょう。冷凍の場合は小分けしてラップに包み、保存袋に入れておくと使う分だけ解凍できるので便利です。
Q.おせちの黒豆は歳の数だけ食べる?
おせちの黒豆を歳の数だけ食べるというのは、全国で広く行われている風習ではありません。
ただし、2007年に紀文が実施した「正月意識調査」では、石川県と島根県の主婦からおせちの黒豆を歳の数だけ食べるという回答がありました。
参照:紀文食品「2008 年紀文・お正月百科」
一部の地域や家庭にこの風習があるのは、節分の豆(大豆)を歳の数だけ食べるという習わしが、なにかの理由でおせち料理にまぎれ込んだと考えられます。
Q.おせちに黒豆を詰めるコツは?
黒豆をおせちに詰める際は、「祝い肴・口取り」を並べる一の重(お重の一段目)に入れるのが基本です。
黒豆の煮汁が周囲の料理に移らないよう、小鉢やカップを使って上手に盛り付けましょう。竹筒や金箔をあしらった容器を利用すれば、見た目がいっそう華やかになり、お正月らしい豪華さを演出できます。
美しく配置することで、黒豆の縁起の良さを引き立てながら祝いの席を彩れるでしょう。
Q.黒豆以外にもおせちは一つひとつ意味がある?
おせち料理は黒豆だけでなく、すべての料理に縁起や願いが込められているのが特徴です。
一部ではありますが、たとえば次のような食材にもそれぞれ意味があります。
|
食材名 |
料理に込められた縁起・願い |
|---|---|
|
数の子 |
子孫繁栄 |
|
田作り |
豊作・五穀豊穣 |
|
昆布巻き |
家庭の幸福 |
おせちは家族の健康や繁栄を象徴する料理の集まりであり、新年を迎えるにふさわしい祝い膳として、それぞれ意味を持っています。
料理の意味を知って食べることで、お正月をより深く楽しめるようになるでしょう。
おせちの黒豆の意味を知っておいしく食べよう

おせちで黒豆を食べるのは、一年間「無病息災」「まめに暮らす」の思いがあり、つまり健康でまじめに働くという願いや心構えからうまれた習わしです。
また、黒豆の黒い色や煮方にもさまざまな意味や願いが込められています。
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