うなぎには天然と養殖の2種類があるため、「味に違いはあるの?」「どちらが美味しいの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
実際、天然うなぎと養殖うなぎは味・見た目・育ち方などが異なります。
この記事では、うなぎの天然・養殖の違いをわかりやすく比較します。読み進めることで、どちらを選ぶべきかが整理でき、自分の好みに合ううなぎを選べるようになるでしょう。
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専門店やスーパーのうなぎはほとんどが天然ではなく養殖

現在、専門店やスーパーに並ぶうなぎは、養殖が中心です。天然うなぎは流通量が非常に少なく、一般に出回ることはほとんどありません。
国内のうなぎの供給量を見ても、2023年の総量57,099トンのうち、天然うなぎはわずか55トンで、全体の0.1%程度しか存在していません(※)。市場に安定して供給できる量のうなぎを確保するためには、計画的に育てられた養殖うなぎが欠かせないことがわかります。
養殖うなぎは、養殖技術の向上によって身のやわらかさや脂乗りが安定し、一般家庭でも質の高い味を楽しめるようになりました。天然うなぎに強いこだわりがない場合は、養殖うなぎが身近で選びやすい選択肢といえるでしょう。
※参考:農林水産省「ウナギの輸入の状況について」
【どっちが美味しい?】天然うなぎと養殖うなぎの味の違い

天然と養殖のどちらが美味しいかは、食べる人の好みで評価が分かれます。一部の魚介類では「養殖よりも天然の方が美味しい」といわれることもありますが、うなぎに関しては、天然の味に必ずしも軍配は上がりません。
天然うなぎは自然環境で動き回って育つため筋肉が発達し、身が締まり香ばしさとすっきりした後味が特徴です。一方、養殖うなぎは安定した水温と栄養価の高い飼料で育つため、まろやかなコクとふっくらした食感が得られます。
日本では養殖うなぎに触れる機会が多いことから、養殖の味が馴染みやすいと考えられます。普段から養殖うなぎを食べている人が天然ものを口にすると、食感や脂の量の差によって、意外性を感じることもあるでしょう。
味以外で天然と養殖のうなぎはどう違う?

味以外の天然と養殖のうなぎの違いは以下の通りです。
|
特徴 |
天然うなぎ |
養殖うなぎ |
|---|---|---|
|
生育環境 |
自然の川や湖で成長 |
養殖池や施設で管理育成 |
|
エサ |
小魚・エビなど自然の餌 |
人工配合飼料 |
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見た目 |
細身で体色が濃い |
太めで色味が淡い |
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値段 |
希少で高価 |
安定供給で手頃 |
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産地 |
各地の河川・湖 |
鹿児島・愛知・宮崎など |
|
時期・旬 |
夏〜秋が旬 |
通年出荷可能 |
生育環境
天然うなぎと養殖うなぎは、生育環境が大きく異なります。
自然の川や湖で成長する天然うなぎは、水温や流れの変化を受けながら生きるため、筋肉が鍛えられ、身が締まりやすいのが特徴です。
一方、養殖うなぎは管理された池や施設で育てられていることから、成長が早く脂が乗りやすい傾向があります。
身の締まり方や脂の量が異なる点を理解して選ぶことで、好みに合った味を楽しめるようになるでしょう。
エサ
天然うなぎと養殖うなぎは、食べるエサが異なります。エサの違いが脂の乗り方や香りに影響し、風味や食感といった味わいの個性を生み出しています。
天然うなぎは川や湖でエビ・カニ・小魚などを捕食しながら育つのが一般的です。季節や地域によってエサが変わるため、香りや旨味に個性が出て、野性味を感じる風味になります。人によっては、後味がすっきりすると感じることもあるでしょう。
一方、養殖うなぎは栄養バランスを整えた人工飼料で育つため、脂の乗りが安定し、均一で濃厚な味に仕上がります。
見た目
天然うなぎと養殖うなぎは、外見にも違いがあります。
自然の川底や岩陰で暮らす天然うなぎは運動量が多いため筋肉質で、体色が濃く身の締まりが際立ちます。
一方、養殖うなぎは限られた池で育つことから体に厚みが出やすく、色味が淡く全体的にふっくらした印象です。皮がやわらかく質感が均一になりやすい点も、養殖うなぎの特徴でしょう。
ただし、外見だけで天然か養殖かを完全に判別するのは難しいとされています。そのため、体型や皮の質感、色合いを組み合わせて判断するのが一般的です。
値段
養殖うなぎは生産量を確保しやすい環境が整っているうえ、流通面のコストも比較的抑えられることから、家庭でも購入しやすい価格帯で販売されています。スーパーや通販では一尾2,000〜3,000円前後が一般的な養殖うなぎの相場です。
一方で天然うなぎは漁獲量が制限されていることから、流通量が極端に少なく希少性が高いため、養殖に比べて値が張ります。天然うなぎは一尾5,000〜10,000円以上になることも珍しくありません。高級価格帯であることから一般的な飲食店では扱いづらく、高級料亭や専門店で提供されるのが一般的です。
産地
天然うなぎと養殖うなぎは、生産される地域にも大きな違いがあります。
天然ものは全国各地の河川や湖、沿岸域で漁獲されており、利根川、浜名湖、琵琶湖などの内水面でも漁が行われています。地域ごとの水質や季節によって風味が変化するのが特徴で、同じ天然でも土地によって味わいに違いが出るのが魅力の一つです。ただし天然物は流通量が限られることから、地域限定の希少品として扱われるのが一般的です。
一方、養殖うなぎは安定した環境を確保できる温暖な地域で生産されています。主要産地は鹿児島県や愛知県(三河一色)、宮崎県といった南の地域に集中しています。全国で流通するうなぎの多くを支えるのは、主要な養殖拠点です。
時期・旬
天然うなぎと養殖うなぎは、美味しさのピークとなる時期・旬が変わります。
自然で育つ天然うなぎは季節の変化を受けやすく、夏から秋にかけて脂が乗りやすくなるのが一般的です。とくに水温が上がる梅雨明けから土用の丑の時期は動きが活発になり、風味が増すといわれています。また秋から冬にかけては産卵に備えて栄養を蓄えるため、身が締まり旨味が濃くなる点も特徴です。
一方、養殖うなぎは環境を人工的に整えることから、温度や餌を調整しながら一年を通して安定した品質で出荷できます。季節に左右されない供給体制が整っており、いつでも同じ味わいを楽しめるのが養殖うなぎの魅力です。
「天然」と呼ばれるうなぎの条件とは

天然うなぎの条件は以下の通りです。
- 川・湖・海など自然環境の中で稚魚の段階から育っていること
- 人の手による給餌や管理を受けていないこと
上記のように、完全に自然下で育ったうなぎだけが「天然うなぎ」として扱われます。ただし、条件を満たす個体は非常に少なく、資源としての確保が難しいのが現状です。
確保が難しい理由として、天然うなぎが生息環境や気候変動の影響を強く受けることが挙げられます。個体数や漁獲量が変動しやすいため、安定的な供給や計画的な漁獲が難しいのが、天然うなぎの流通を増やすうえでの大きな課題です。
また、天然うなぎは市場価値が高いため乱獲されるリスクもあります。こうした背景から、各都道府県では漁期や使用できる漁具、採捕できるサイズなどに細かな規制を設けています。原則として許可を受けた漁業者以外は天然うなぎを扱うことができません。
条件や基準を満たして、はじめて天然うなぎとして市場に出回ります。
日本の天然うなぎはニホンウナギが主流

日本で天然うなぎとして流通している多くは、在来種であるニホンウナギです。
二ホンウナギは河川や湖で育ち、成長後に海へ向かって産卵する回遊魚です。日本各地の水域で広く確認されており、大きいものでは体長が約1mに達する個体も見られます。
生息域は日本に限らず、台湾や中国沿岸にもおよびます。産卵はフィリピン東方のマリアナ海域付近で行われるとされており、孵化した稚魚(レプトセファルス)は黒潮に乗って日本沿岸へ運ばれるのが特徴です。その後、河川に遡上して成長するという回遊行動が、二ホンウナギの生態です。
しかし近年は二ホンウナギの個体数の減少が深刻化しており、現在は絶滅危惧種に分類されているため、保全への取り組みが重要視されています。
天然うなぎに関するよくある質問

天然うなぎに関するよくある質問に回答していきます。
- 天然うなぎはどこで食べられる?
- 天然うなぎを獲るのは違法?
- 天然うなぎは絶滅するおそれがある?
天然うなぎはどこで食べられる?
天然うなぎは、主に専門のうなぎ料理店や天然ものを扱う老舗店で提供されています。
流通量が非常に少なく、季節や天候によって漁獲が左右されるため、一般的な飲食店で見かけることはほとんどないでしょう。専門店でも「入荷時のみ提供」や「要予約」として限定的に案内しているのが一般的です。
天然うなぎを獲るのは違法?
一定の手続きや条件を守らずに天然うなぎを獲る行為は違法です。
各都道府県では漁期や漁具、天然うなぎを採捕できる大きさに厳しい規則があります。たとえば、島根県では全長30センチメートル未満のニホンウナギに関して、年間を通して採ってはいけないと定められています(※1)。
うなぎの養殖業においても、国が「指定養殖業」として管理しており、事業を実施する際には都道府県知事を通じて許可を受けなければなりません(※2)。
※1 参考:島根県「ニホンウナギの採捕の禁止について」
※2 参考:水産庁「うなぎ養殖業の許可制について」
天然うなぎは絶滅するおそれがある?
ニホンウナギは資源量が大きく減少しており、将来的に絶滅の危険性が指摘されていることも事実です。すぐに姿を消すわけではありませんが、乱獲や環境悪化が続けば個体数が回復しにくくなるかもしれないと懸念されています。
環境破壊や海洋環境の変化、過度な漁獲が重なったことで個体数は長期的に減り続けています。実際に、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧IB類(EN)」に分類されました(※)。
個体数が減少している状況を踏まえ、水産庁や各都道府県は禁漁期間の設定や漁獲量の管理をして、資源の再生産に向けた取り組みを強化しています。
※参考:環境省「第4次レッドリストの公表について(汽水・淡水魚類)」
天然うなぎは希少価値が高め!身近な味を楽しむなら養殖うなぎを

天然うなぎは自然環境で育つ希少な食材であり、香ばしさと引き締まった身を楽しめる特別な存在です。しかし、漁獲量が少なく資源管理も厳格に行われているため、市場で出会える機会は限られているでしょう。
一方で、養殖うなぎは品質管理や飼育技術の進化により、脂乗りが安定し、ふっくらとした食感を一年中楽しめるのが特徴です。日常的にうなぎの旨味を味わいたい方には、手頃で品質が均一な養殖うなぎの方が選びやすいでしょう。
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